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「はやく猫になりたい」掲載に際して、きらら無印掲載のシェイミン先生のゲスト作品を振り返る

 2022年9月9日の日付が変わってすぐ、私のもとにとても喜ばしい知らせが舞い降りました。

 待ちに待ったシェイミン先生のゲスト作品がこの日発売されるまんがタイムきらら2022年10月号に掲載されているということだったのです。

 シェイミ(Twitter:@shaymin0902)先生の作品は2021年6月号から8月号に「バス停のお姫様」が、2022年2月号から4月号に「学校帰りのエトランゼ」が掲載されており*1、私はそれを読んでシェイミン先生の描き出す世界に引き込まれてしまいました。それでシェイミン先生の新作である「はやく猫になりたい」が掲載された今、改めてシェイミン先生の過去の作品の魅力を紹介することによってひとりでも多くの方に「はやく猫になりたい」を、そして「学校帰りのエトランゼ」「バス停のお姫様」を好きになってもらいたいと考え、この記事を書いています。

バス停のお姫様

 主人公である小蜜は帰りのバス停でいつも見かける他校の女の子に心惹かれ、仲良くなりたいと願う。けれども小蜜はこれまで他人に自分から話しかけたことのないほどの人見知り。そんな人見知りを克服したいとも思う小蜜は、親友の茜にも励まされ、意を決して「バス停のお姫様」美冬に声をかける…といった物語。

 「バス停のお姫様」のタイトル通り、本作においてはバス停が重要な空間として用いられています。バスに乗るためには使わなければならず*2、一方でバスを使わないひとにも歩道としての役割を果たす空間であるバス停。異なる目的を持った人間が空間を共有する場であるバス停で、通う学校も異なる小蜜と美冬が出会ったわけです。

 また、バス停にやってくる乗り物であるバスも物語に適合した存在であるといえます。バスは基本的には時刻表通りにやってきてバス停から乗客を乗せていきますが、ほかの車と共に道路を走るという性質上ときには遅れて到着することにもなり、安定しません。このため小蜜はバス停で美冬をいつも見かけることができ、しかし小蜜が美冬に話しかけてもその会話はそう長くない時間で、しかも時として極端に短い時間で中断されてしまうわけです。

 バス停が開かれた空間であるならば、対照的なのは小蜜と茜の通う学校です。学校にはその学校の生徒をはじめとする関係者しか立ち寄ることができず、美冬のいない空間としてもっぱら小蜜と茜のやりとりが描かれます。

 人見知りの小蜜に、同じ高校に通う幼なじみで小蜜の唯一の友人であった茜。小蜜は開かれた空間であるバス停で美冬に接し、関係が形作られ深まっていく。そんな様子が描かれた素晴らしい作品です。掲載号数・ページは以下の通りですので、該当のまんがタイムきららをお持ちの方はそれで、持っていないという方もなんとかして読んでいただきたいものです。

学校帰りのエトランゼ

  高校生になって3週間、熱を出しこれまで学校に行けなかったために人間関係の構築ができなかった飛鳥は海へ向かい、そこで放課後によく寄り道をするという少女・琴美に出会う。ふたりは同じ高校の生徒で、学校で再び出会ってからは一緒に放課後の寄り道をするようになる…といった物語。

 それぞれの回でさまざまな場所への寄り道をしたふたり。第1話では遠くの海まで行って学校というひとつの世界がちっぽけなものであることに気づいたように、それぞれの場所、それぞれの状況とうまく対応した気づきを得て飛鳥と琴美の関係が発展していく様子が描かれています。

 そんな「学校帰りのエトランゼ」の掲載号数・ページは以下の通りです。電子書籍として雑誌を買うこともいまならできましょうから、ぜひ読んでいただきたいなと思います。

 ちなみに、「学校帰りのエトランゼ」では鎌倉をはじめとした実際の土地の風景が描かれています。以前それらの土地を訪問したときの記事がありますので、物語を読んだあとにでもどうぞ。

tohokubu-hctr.hatenablog.com

 さて、ここまでシェイミン先生のまんがタイムきららにおける過去2作を振り返ってきたわけですが、私がシェイミン先生の作品を読んで感じたのは、空間を通して関係を描くのがとてもきれいだなというものでした。「バス停のお姫様」であればバス停と学校、「学校帰りのエトランゼ」であれば放課後に寄り道をする先の具体的な場所。そうした空間のもつ特徴を存分に生かして関係の構築を描き出していて、そうして得られた関係の描写に私は心を惹かれたのです。

 そして今回の「はやく猫になりたい」。生まれ変わったら猫になりたいという願い事をそれぞれに持ち、願いが叶うという噂を聞いて同じ神社に毎日お参りをする高校生と小学生。高校生は自分と同じで毎日神社に来ている小学生のことが気になり声をかけてみると、願い事は同じでもその内実は異なり…というところから物語が動き出します。

 現時点で第1話が以下の通り掲載されたところですので、みなさんもまんがタイムきららを買ってシェイミン先生の描き出す世界に触れてみてはいかがでしょうか。そしてよければアンケートに感想を書いて編集部に送りましょう。

*1:きらら4誌すべてに広げるとまんがタイムきららフォワード2020年9月号に「神崎さんちのちっちゃい姉」が掲載されていますが、私はまだ読めていないので触れることができません。読みたい。

*2:経路上の停車可能な区間のどこでも乗降可能なフリー乗降区間を除く。大型の市営バスが走るほどの都会でフリー乗降区間があるとは考えにくいが